15年前、人工密集による犯罪率の増加に手を焼いた政府が
苦肉の策として建設したその島は、
当時急成長を遂げていたギガンテックサイバートロン社(GC社)
が大規模な施設を建造したのを皮切りに、
マンハッタン島に見切りをつけた人々が次々と移動。
「ニュー・ニューヨーク」ブームを巻き起こした。
しかし、時が経つにつれてその立地条件や
島の所有権をめぐっての問題が表面化。
当初の思惑とは逆に犯罪率は増加傾向となる。
さらに、それらと平行するように行われていった
島本体の増築につぐ増築。島のスラム化は時間の問題となった。
そして数年後。島は、その中心にそびえ立つGC社のビルと、
いびつに増殖を重ね続けて異様な姿へと変化した構造物で成り立つ
悪夢のような様相を呈していた。
その中ではありとあらゆる犯罪がはびこり
サイボーグ手術を施した凶悪犯が闊歩する無法地帯と化し
またその変化は島内だけに止まらず
「旧」ニューヨークにも今まで以上の凶悪犯罪が多発することとなった。
業を煮やした政府は、極秘の内に捕縛した犯罪者を
その自由と引き替えに警察機構の外部組織として扱うことを決定。
「存在しないことになっている警官」=「ZERO
COP」
と名付けられた彼らを凶悪犯罪の取り締まりや
政府による非合法活動等にあたらせることとした。
彼らはこめかみに埋め込まれた極小の「チップ」により
完全に管理され、一定の貢献度に達すると自由を得ることが出来る。
しかし命令不履行時には脳髄に直接流される電流による苦痛、
もしくはすみやかな死が与えられることになっている。
今回の彼らの任務は3人1組のチームで
ゼノビア島に侵入。
凶悪犯罪を鎮圧しつつ、GC社が
島の全権を掌握し凶悪犯罪者達を相手に
サイバネ手術の実験や新開発武器の実用試験
を行っていることの証拠をつかみ
これらを壊滅させることにある。
「ゼノビア誕生年表 西暦1992〜2020」 | |
1992年 | カリフォルニアにて「サイ・エレクトロニクス社」設立。 社長はガース・エルロン(当時28歳) |
1994年 | アメリカ合衆国議会にて、犯罪の低年齢化と凶悪化が問題となる。 |
1996年 | MIT教授スミス・ブローレンによる論文「人工骨格とその有用性」発表。 |
1998年 | 筑波技術大学において、極めて安定性の高い2足歩行ユニットの制作に成功。 |
同年 | 合衆国政府、人口密集による各地のスラム化と失業率の上昇の打開策として「プロジェクト・サリンジャー」を発足。第一段階としてマンハッタン島とスタテン島の中間地点に人工島の建設を開始。 |
1999年 | イギリスのマンクライス原子力発電所、メルトダウン。ヨーロッパ一帯に大量の放射能を含んだ灰が降る。さらにジェット気流に乗った灰は北アメリカ大陸からモンゴルにまで及び、死者8千人の戦後最大級の惨事となる。 |
2002年 | 「サイ・エレクトロニクス社」、日本の「ギガヤマ工業」に吸収合併。本社機能を東京に移転し、新たに「ギガンテック・サイバートロン社」に名称変更。 |
2003年 | 5年に及ぶ世界的な大不況を脱出するため、「企業優待特別法」(企業法)が日本にて成立。同時に首都機能を静岡県馬槻町付近に移転。周辺の8町村を含めた地域を新東京都に制定。旧東京都(現東京府)は企業集合地域として企業法の保護下に入る。 |
同年 | アラブ連邦、世界初の実用2足歩行兵器「スラ・アズビア」の完成と正式採用を発表。 |
2004年 | ニューヨーク南方2キロ地点に人工島「ゼノビア」完成。 |
2006年 | 「ギガンテック・サイバートロン社」(GC社)、特殊用途におけるサイボーグ技術の実用化に成功。これにより人類はその行動範囲を無限に広げる用意が整ったと発表。人体を改造するという行為に拒否反応を持つ宗教団体などから強い反発を受ける |
同年 | ミシガン州、ニューヨーク州、ニュージャージー州においても企業法制定。 |
2009年 | GC社ゼノビア島に本社機能を移転。その40%を買い取る。この後一時的にゼノビア島移住ブームが起こる。(ニュー・ニューヨークブーム) |
2010年 | マンクライス原発事故(マンクライス・クラッシュ)の事後処理、予定の70%を消化。調査団体より、この事故による死者は2千万人にのぼり、2次被害者の数は推定1億6千万人と発表される。 |
同年 | 世界初の高々度プラットフォーム「コロンビア」の初飛行成功。 |
2015年 | マンハッタン島バッテリーパーク付近を中心とした地域に於いて大規模な暴動が発生。死者40人を数える。 |
2016年 | ロサンゼルス、デトロイト、ニューヨークに於いて警察機構の分散化を目的とした民間委任法(ロレンツ法)が制定。各地区に3〜5の中型警察機構が設立された。 |
2017年 | ゼノビア島の4分の1がスラム化。正式に登録された市民は島全体の3分の1以下。 |
同年 | GC社、ゼノビア島の80%を所有。島内の不法住居者や犯罪者に対しては何の対策も見られず。 |
同年 | あまりの凶悪犯罪の増加に悩んだ合衆国政府は、「へルター特別刑務所」(デスウイッシュ刑務所)内の犯罪者を特殊チームとして編成。減刑と引き替えに犯罪者の鎮圧に当たらせることに決定。 実験的に9人を外部管理とする。 |
2018年 | マンハッタン島内部で小規模のテロが多発。同時期にGC社がゼノビア島の占有件を主張。政府は表向きこれを承認。 |
2019年 | 合衆国政府、ゼノビア内部にてGC社が、新兵器試験及び人体改造実験を不法住居者や犯罪者に対して行っていたことの証拠を掴む。 |
同年 | 政府は極秘の内にGC社の抹殺を決定。「ZERO COP」が投入される |