資源採掘用小惑星「天源」との連絡が途絶える2分前、近くの岩塊に設置された監視用カメラがその姿を捉えた。直後にカメラは機能停止、「天源」の破壊もこの機体によってなされたと思ってほぼ間違いない。その威圧的なシルエットを構成する左右に大きく張り出た4基の大推力噴出口や増加冷却漕から判断するに、機動性と作戦行動時間は第6世代宇宙航空機に準じる性能を持つものと思われる。以上の予測から本機は一撃離脱型の戦法を主軸とした攻撃を駆使してくるものと思われ、強力な装甲と圧倒的な火力を備えている可能性が高い。可能な限り直接交戦は避けること。
S.O.Qシリーズ第12案で、ステルス性のみを追求したデータ取得用の試作宇宙機。その針の様に細身な機体は、電磁波を吸収する塗料で漆黒のマット(つや消し)に仕上げられており、レーダー波を反射し難い形状のせいで、主機停止時に索敵網にかかる可能性はほとんど無い。
また、主機から発生する赤外線、電磁波等を94%以上遮断可能で、稼働中における被発見率も驚異的に低い。
さらに、受信したレーダー波を分析し、同周波数のレーダー波を送り返す事によって、相手のレーダー上に偽の像(ゴースト)を発生させる事ができる「リアクティブ・ジャミング・システム(対電波探知能動妨害装置)」を搭載している。
自由に動かせる腕状のバインドアームも備えており、これを展開し活用する事でバーニアを噴射せずにある程度の姿勢制御が可能。
武装は極低出力のパルスレーザーを搭載しているのみで、実質上は非武装と言って良い。
地球周回軌道上には無数の浮遊物、いわば宇宙のゴミが漂っている。観測可能な浮遊物は全て軌道要素を特定され、NASAの監視下にあるのだが、宇宙開発が盛んな現代では日々その浮遊物は増える一方である。(株)尽星の衛星軌道監視部では、これら新規浮遊物の発見と軌道要素特定を主な業務としている。また危険な浮遊物については軌道変更や破壊を行う場合もある。
(株)尽星重工が開発している汎用小型宇宙機の事。尽星グループ会長ミアマ氏は、同シリーズにより尽星重工が兵器メーカーとしての色を濃くするのを嫌っているため、戦闘機として開発された機体はグループ内部だけで使用し、外部への供給を行っていない。
現在までに20数案が設計されたが、多くは試作機の制作かそれ以前の段階で破棄されている。
公開されているS.O.Qシリーズ一覧の資料
第十七案『遠弓』は、単独での運用も可能な非武装の汎用高出力宇宙機である。有人機ではあるが、S.O.Qシリーズの加減速用ブースターとされる事も多く、その際には無人で運用する。自力で回収宙域へ帰還可能なら再利用されるが、加速専用の場合など回収不可能なときにはやむなく使い捨てとなる。
第一六案『遠矢』と組み合せて『遠弓』を使い捨て運用する事により、『遠矢』は小型宇宙機の中で最長の実用航続距離(出発点への帰還を考慮した上での航続距離)を持つ事ができる。
機体はイギリス空軍の旧型輸送機「スカイヤーG7」に対空砲とマイクロミサイルポッドを増設したものだが、その実体は高機動制圧クラフト「海燕(カイエン)」を作戦区域まで輸送するための母機としての役割を持っている。「海燕」自体は数年前カイロで行われた航空ショーで、VTOL機能を持った局地制圧用攻撃機として(株)ナカニタが発表したものと同一機体であることを確認。同機は当時のデモンストレーション時から稼働時間の短さが問題となっていたが、専用の母機を用意することにより解決を図った物と思われる。ただしもう一つの欠点として、当時から指摘されていたバランスの悪さは、機体構造上根本的な解決は不可能であり、交戦時には姿勢制御ユニットを優先的に攻撃することが効果的であると思われる。
化石燃料の消費とニ酸化炭素の排出が制限されたとはいえ、現在の地球人類を取り巻く環境は劣悪の一語に尽きる。スペースコロニーの建設と移住も始まってはいるが、人類はやはり他の惑星をテラフォーミングしての移住という手段を選ばざるをえない状況に追い込まれてしまっている。
こうした状況下、宇宙開発関連企業は互いに連携して他の惑星のテラフォーミングを計画しているのだが、こと火星開発に於いては尽星グループと八福星間開発公司の間で、どちらが主導権を得るかという争いが表面化しつつあった。
アジア大陸の隅に位置する小さな国。国民の労働層のほとんどは八福星間開発公司と、その関連会社に従事しており、世界中で企業と国の区別が最も希薄な国である。
地球圏における(株)尽星の宇宙開発業務の要がステーション「経堂9」で、各ラグランジュポイント、月面、高高度プラットフォームなどの間の中継基地として重要な存在となっている。東京府の(株)尽星本社ビルが尽星グループの情報的な中心に位置するとすれば、「経堂9」は物理的な中心と言える。
「経堂9」では中継業務の他、外部への中規模無重量プラントを提供しており、そこでは、特殊な製法による酒類の醸造や食品の研究、低軌道ラボ衛星ではできない規模の無重量実験等が行われている。
22歳 (株)尽星建設 豊の海防衛部 主任補
あまりにも秀でたパイロット技能と歯に衣着せぬ言動が災いして、関連会社の月面採掘所防衛という閑職に追いやられていた。しかし、たまたま本社を訪れたさいの敵襲で、急遽防衛2課に返り咲くこととなる。八指多とは学生時代からのつきあいで、仲が良いが口論も多く、久々のコンビ復活に周囲も不安を隠しきれない。実は心優しく、人を思いやる気持ちも強いが、その言動からかそれが相手に伝わらないことも多い。
月面勤務時に骨格強化手術を受けており、防衛2課でこの手術を施されているのは国村のみ。
オーソドックスな自然保護の主張を唱える団体。自然=人の手が介在しない物、非自然=人の作りし物…という観点が行動原理となっている模様。「見た目の自然」を保護する事しか知らない団体などと揶揄される事も多い。
分裂前は、企業の船舶に自前の船をぶつけるなどのいわば妨害行為も行なっていたが、分裂後の主な活動は都市部におけるデモ行進などで、他の2団体に比べてすっかり目立たない存在となってしまっている。
高高度プラットフォームとは、衛星軌道到達の足がかりとして常時高々度を飛行している巨大な航空機である。「慶絡」は(株)尽星が保有しているプラットフォームの名称で、往還機「懸崖」と「蒙蘭」により地上と軌道上を往来する物資は大半がここを経由する。
通常は成層圏に位置しているのだが、「中小企業解放戦線」による(株)尽星北米支社への襲撃の際には、駐留中のJDF緊急発進のために高度を限界近くまで下げた。この時には往還機とのランデブーダイヤが大幅に乱れ、尽星グループに大きな損害が出た。
月は宇宙開発において欠かせない資源の宝庫であり、尽星グループも月面に採掘所を設けて、独自に稀少鉱物資源やヘリウム3の採掘を行っている。鉱物資源の場合は、月面からの打ち上げコストの問題から「天源」等の資源採掘用小惑星から採取した物が用いられる事が多く、月面では主にヘリウム3が採掘されていると考えて良い。
地表から衛星低軌道まで到達可能なスペースプレーン。しかし普段は空港に着陸する事はほとんど無く、「慶絡」と衛星軌道上の間の行き来に使われている。
漆黒のブーメランを連想させるその形状は、2040年代に合衆国空軍が仮採用を発表したYF-152に酷似している。しかし装備等は既に知られているものとは異なり制圧用に特化した機体であることが見て取れる。その機動などから推察される機体構成は合衆国空軍の発表による物とは相当の違いがあると考えられ、外観のみを真似たコピー品である可能性が高い。写真は、熱光留照射器を切り放し離脱しようとしているところを捉えたもの。
■骨格強化手術
低重力下、高重力下での生活や、耐Gのために骨の組成を調整、強化し、カルシウムの過不足を防ぐ手術。
自然保護を主目的として活動する大きな団体は、つい最近まで「グリーンノア」ただひとつであった。しかし宇宙開発が進む現在、自然という言葉の定義にも色々な解釈がなされるようになり、その違いから同団体は3つに分裂していた。結果として、発足当時から一貫して生態系保護主義を唱える元祖「グリーンノア」、宇宙開発推進を認める「ソーラリアン」、一切の宇宙開発を否定する「リトルアース」の3団体が現存している。
機体を軽量化して運動性を向上させ、照準システムのレンジを全天にまで広げた第10案「紫電」は、衛星軌道上の浮遊物清掃目的に使われていた第8案「紫炎」が原形となっている。全方向をカバーする「全天熱光留照射機」は、小型の浮遊物をその場で焼却する目的で「紫炎」に搭載されていた装備を武器に転用した物だが、機体のペイロードと主機の出力が不足しているため威力は低めに抑えられている。マイクロミサイルポッドがこの機体にのみ装備されているのはその火力不足を補う意味もある。 「紫電」の機体は「屠竜」や「鵬牙」に比べて格段に軽量なため、中型の往還機でも衛星軌道上に打ち上げることができる他、増加推進機1機の付加により高々度プラットフォームからなら自力での軌道到達も可能な程である。
・拡散型web:全天熱光留照射機(ALLRANGE)
・集中型web:自己索識膨粒子弾(BOU-RYU )
現在、全世界的に化石燃料の使用制限措置が施行されており、地上での電力確保には発電衛星が欠かせない存在となっている。
静止衛星軌道上に2機置かれている東雲型の発電衛星は、マイクロ波で地上に電力を送っており、2機合わせると日本全土の最大電力使用量の30%を送電可能。この電力の供給は尽星グループ内の(株)尽星電力の担当業務である。
●資本金1兆円
●自社保有施設/機器
・自社ビル(東京府大田区)(注)その他営業所は世界各都市に点在
・ラグランジュポイント上のステーション「経堂9」
・高高度プラットフォーム「慶絡」×2
・発電衛星「東雲」×2
・軌道エレベーター「ニンテン」
・打ち上げ基地(ハワイ島)
・資源採掘用小惑星「天源」
・資源採掘用小惑星「セレス」(注)小惑星帯にある
・海上油田兼発着場
・月面資源採掘所
・往還機「懸崖」×4
・往還機「蒙蘭」×12
・汎用輸送宇宙機「鯖杓」×7
・私設自衛部隊「JDF」(注)通称「蒼穹紅蓮隊」
創業当時は日本の宇宙開発事業団の孫請けに過ぎなかった「(株)尽星」は、経営の合理化、効率的な機器運用の徹底等により、宇宙開発関連会社の中では異例の早さで一部上場を遂げた。同社はその後、航空会社、実験機器製造メーカー、電子部品会社等との吸収合併をくり返し、20数年の間に世界でも有数の宇宙開発会社となり、関連企業共々現在もなお成長を続ける巨大企業である。
この急成長の推進力は、往還機パイロット出身の同社会長、ミアマ氏の手腕によるところが大きい。ミアマ氏は社長の椅子を後継者に譲り、会長となった現在でも、時には自ら往還機を操縦して地上と軌道上を行き来し、精力的に仕事をこなす毎日を送っている。
「尽星」という社名には、その字が示す通り「星に尽くす」という意味がある。個人の利益、会社の利益、人類全体の利益を追求した上で、それを超越した地球や太陽系全体にとっての利益を産み出すような企業であれ、というミアマ会長の理念が社名となっている。
地上を直接攻撃可能な光学兵器搭載衛星の開発は国際宇宙法により禁止されている。しかし、DSCS衛星からの情報によると、識別名「深閃」にはその機能はおろか対宙対地における攻撃、防御機能も充実しており、むしろ小型の宇宙要塞と形容するに相応しい物であることが判明している。4枚装備されている合成開口集電板による索敵機能と合わせると、地上に対する絶対的な脅威となりえ、当該国(企業立国エニグマ)による即時撤去が望まれる。
建設資材用、生活物資用、推進燃料用、実験機器用など必要に応じて様々な用途のコンテナを結合させ、前後にコクピット部分と推進部分を連結した物が宇宙機「鯖杓」である。コンテナを全て外した状態の形状が魚や柄杓を連想させるところから、この名前が付いた。
■全方位照準固定システム「N.A.L.S」(No Blindspot All range Laser System)
目標特定、照準、追尾、レーザー誘導までを一括して行なう、S.O.Qシリーズ宇宙機特有の武装システムの総称。
搭載される機体主機出力と照準機の電離位相特性の違いから、使用する武器の種類によって、照準可能範囲(w.e.b)の形状と照準数が異なる。
「蒼穹紅蓮隊」とは、衛星打上げ請け負い業者「(株)尽星」の私設自衛部隊「JDF」の俗称。自衛部隊となってはいるが、危険と判断された作業を代行したり、お得意先からの要請で紛争鎮圧などに乗り出したりと、何でも屋的部署でもある。青空(蒼穹)を真紅(紅蓮)に染めるならず者部隊(愚連隊)といった意味で、この俗称が付いている。
自然保護団体のひとつで、3団体のうち唯一宇宙開発を容認しているため、宇宙開発関連企業にとっては都合の良い存在となっている。
掲げる主義の要旨は以下の通り。
「宇宙開発を進める事は、人類が進化の過程でその行動圏を広げるという意味においては極めて自然な事だ。人類は地球を離れ、他の惑星へと生活の場を移すべきだ。宇宙開発の過程で行なう行為は自然破壊とは限らない。現在の地球では人間が自然に暮らす事すら難しくなっており、地球に暮らす事自体が自然破壊だと言える。」
(株)尽星グループや八福星間開発公司などの大企業の陰には、下請け、孫請けとして現場の仕事をこなしてきた無数の中小企業の存在がある。大企業側としても、下請け以下の各社無しでは顧客の要求全てを満たす事は出来ず、両者は持ちつ持たれつの共存関係にある。
世界有数の巨大企業である(株)尽星は、その規模の割には大胆な経営戦略とフットワークの軽さを併せ持っており、ささいな方針変更の結果として下請け以下の中小企業を振り回すことも少なくない。その犠牲となり、資本力や企業体力を持たない数多くの企業が倒産、清算、劣悪な条件での吸収合併へと追い込まれていった経緯もあり、(株)尽星に対して悪意を抱いている、言わば犠牲者も相当数存在すると見られている。
そんな中、企業テログループは、(株)尽星をはじめとする大企業の横暴を粛正するという大義名分を掲げ、大手企業の役員誘拐、施設に対する直接のテロ行為等を繰り返してきた。
企業テログループは、現在「中小企業解放戦線」「血の契約」「労組の星」「真空党」「デッドリーベア(ベア=ベースアップ)」の計5団体の存在が確認されているが、小規模団体もいくつか存在するらしく、それらの正確な数は不明となっている。
この中で最も規模が大きく、最も過激なテロを行うのが「中小企業解放戦線」を名乗るグループなのだが、その軍隊にも匹敵する武装の後ろ盾となっている資金の出所や、指導者的立場にある中心人物については一切情報が無い。
惑星規模の環境工学技術を用いて、例えば火星や金星を地球化し、人類が居住可能な環境を作り出す事。尽星グループでもテラフォーミング技術について研究中の部署がある。ただし実現に向けては技術的問題も膨大で、いまだ机上の計画段階である。
また八福星間開発公司には、地球上における生態系を取り巻く環境の悪化にともない、テラフォーミング技術を用いて地球を再地球化(この場合は生態系を産業革命以前の状態まで戻す事)する計画「リ・テラフォームプロジェクト」も存在するらしい。
(株)尽星が小惑星帯からラグランジュポイント上に移動させ、鉱物資源の採掘源として使っている岩塊。内部には簡易な居住施設もある。
■電脳化
ニューロチップで作られた有機半導体により脳に電脳を電子的に結合させる事。これにより、脳に各種センサー、ネットアダプダ、補助電脳を接続し、脳と心の働きを助けるのが目的。脳による記憶には忘却の可能性も伴うが、電脳による記憶は忘却する事が無い。
電脳化は特に義務づけられている訳では無く、個人の意志によって行なう。なお未成年の電脳化は許可されていない。一般成人では男性6割、女性4割が電脳化しているが、手術後の適応力は女性の方が高く、社会で電脳を活用している割合は女性の方が多い。男性は電脳化による思考や記憶力の増大に適応できないケースが女性より多くみられる。
(株)尽星重工が汎用小型宇宙機として開発しているS.O.Qシリーズの第4案。宇宙機としての性能のみを重視していた第1案、地球大気圏内での飛行を考慮し多目的機として立案された第2案、自動照準システムを搭載し初めて戦闘機として試作機まで作られた第3案に続き、金星及び火星の大気圏内での作戦行動をも視野に入れて開発されたのがこの「屠竜」である。
その強力な武装と汎用性の高さから、「蒼穹紅蓮隊」ことJDFの活動といえばこの機体の活躍…と等号で結んでも大袈裟では無い程「屠竜」は発進回数を重ねている。それゆえ先進各国や他企業等、外部からの製品化、製造技術の供与を望む声も高かったが、会長であるミアマ氏が尽星グループの兵器メーカー化を嫌ったために、同グループ内部の配備のみにとどまっている。
・拡散型web:半自立荷電曳導弾( EI-DOU )
・集中型web:渦状磁界重粒子弾(PINPOINT)
その巨体と特徴的な火炎放射機能内蔵の汎用腕等の武装から判断するに、以前中国軍で試作された超級浮遊戦車「竜鰐暫」(リュウガクザン)とほぼ同一の機体であると思われる。同機は敵要塞を地上正面から破壊する事を目的として開発された一種の攻城兵器としての意味あいが強かったが、その有用性には国内からも疑問の声が多く、僅か2機が試作されたのみに止まった。それがどのような経緯で「中小企業解放戦線」が所有するに至ったかは全くの不明であるが同団体の背後に見え隠れしている某企業国家と関係があるものと思われる。
「ニンテン」の建設は(株)尽星グループが総力をあげて取り組んでいる事業である。現在は着工直後のため進行度は2%程度、完成は30年後を予定している壮大なプロジェクトである。
企業立国エニグマに本社を置く宇宙開発会社。(株)尽星に次ぎ世界で2番目のシェアを誇る。一時期は世界最大の宇宙開発関連企業だったのだが、(株)尽星の急成長に押されて一旦規模を縮小せざるを得なかった。しかしその後、強引な営業方針と低価格な労働力の確保により、現在の地位まで会社全体を建て直す事に成功。軌道上への物資打ち上げを始め、(株)尽星より低価格での作業の請負いができる事から、衛星打ち上げ等に於いては引き合いは多い。
1970年代にソ連のヤン・シュタインベックにより発表された「高高度中継滞空プラットフォーム」の概念は、高空に巨大なプラットフォームを半永久的に滞空させて衛星軌道と地上との足がかりにするという物である。現在地球では約8機の「プラットフォーム」が滞空しており、軌道上への行き来をより身近な物としている。しかし「八福星間開発公司」が開発中の「爆懺」は、むしろ火星全土を攻撃範囲に含む事が可能な巨大爆撃機とでも言うべきもので、敵対勢力がほとんど存在しない今、これを離陸させることで、火星全土の制空権は「八福星間開発公司」に掌握されてしまうことになる。そのような事態を避けるため、一刻も早く開発中の同機体を破壊することが望まれる。
(株)尽星重工には将来的に高重力下(木星周辺等)での運用を目的とした宇宙機の制作予定があり、S.O.Qシリーズの第21案以降はその準備の為立案されている。第25案である「鵬牙」は、21〜24案で得られた技術に既存の「屠竜」「紫電」の武装構想を合わせ、S.O.Qシリーズ集大成といった形で開発された機体である。推進剤の搭載能力と推進機の出力もシリーズ最大となっており、理論上の最終速度(減速をしないという前提で、推進剤を全て加速に使用した場合の最高速度)は、航宙艦を含めた上でも現存する機体の中で最高を誇る。
但し「鵬牙」主機の出力特性を原因とする、操作性のクセの強さは相当な物で、テストパイロットらの評判も悪く「実用は不可能だろう」との声も囁かれる程だった。事実、尽星グループ内でも「蒼穹紅蓮隊」以外の部署では一切使用されていない。
・拡散型web:無死角偏重粒子弾" RANDOM
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・集中型web:索導粒荷無双砲弾" MU-SOU
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本名:御天 第六郎(ミアマ ダイロクロウ)
尽星グループ会長、86歳。(株)尽星創業者で前社長。NASDAの下請け会社で往還機のパイロットをしていたが、周囲のあまりに効率の悪い仕事ぶりと資金の無駄使いに呆れ果てて独立。臨機応変をモットーに自己のフットワークの軽さを活かして地球上と軌道上を飛び回り、自分の会社である(株)尽星を驚異的な早さで成長させ、親会社やNASDA、NASAをも越える規模の大企業にした。
東京空襲事件の折りには、JDFのパイロットを押しのけ「オレが出撃する」と言い出して周囲を困惑させた。
第六郎という名前だが長男らしい。
本名:御天 睦昭(ミアマ ムツアキラ)
(株)尽星 代表取締役社長。ミアマ会長の実子、52歳。工業大学卒業後、(株)尽星の下請けにあたる推進機製造会社(株)ミズシナに就職。その後(株)尽星重工技術部主任、(株)尽星北米支社長を経て、2050年から(株)尽星の社長職に就いている。
父親でもある会長のモットーや「星に尽くす」という尽星の企業理念は十二分に理解しているが、利益主義的な部分はミアマ会長より大きく、社長就任後の尽星グループの伸びも無視できない。就任前後に周囲から囁かれた「血縁人事」「親の七光り」等という陰口もすぐに消えた。
ミカヅキとは異母兄弟にあたるが、その事実を知るのはミカヅキのみ。
19歳 (株)尽星重工 軌道事業部 防衛2課所属
入社1年の新人ではあるが確かな操縦技術を持っている。その負けん気の強さとあからさまな上昇志向で、既に社内に敵も多いが、そんなところを八指多に気に入られその下で訓練を重ねる日々を送っていた。実はミアマ会長の隠し子なのだが、周りはおろか会長さえも知らない事実となっており、本人も会長に対して複雑な感情を抱いているようだ。
既存の旅客輸送機を改良し、高高度プラットフォーム「慶絡」とのドッキング機能を付加した航空機。一般の空港を離着陸し、旅客ユニットや輸送ユニットを「慶絡」とやりとりする。
24歳 (株)尽星重工 軌道事業部 防衛2課課長
軌道事業部防衛2課、すなわちJ.D.F防空部を若くして束ねる才媛。(電脳化により、個人の記憶容量や経験等は必ずしも重要な要素では無くなっているので、さほど珍しいことではない)徹底した電脳化とその相性からくる反応速度は当代随一。性格は面倒見もよく、周囲の信望も厚いが、少々ムラッ気があるのがタマに傷。現在は区内の借り上げ社宅にて、ハムスターと暮らしている。離婚歴有り。
宇宙開発反対を主義として唱えており、時には企業テログループと手を結んで大企業に対する破壊活動も行なう。宇宙開発関連企業にとっては実に迷惑な存在。
掲げる主義の要旨は以下の通り。
「人類が他の天体へ進出するという行為は、その天体を地球生命圏による汚染にさらす事と同義であり、それは即ち他の天体の自然を破壊するという行為でもある。人類は地球に生まれ地球に死すべき存在であるからして、宇宙開発は即刻中止すべきだ。」